いじめの本質

「浮浪雲」というマンガをご存じでしょうか。江戸時代の品川宿を舞台にした人情漫画です。

先日、知り合いが読み終えたビッグコミックオリジナルを「読まないか?」とくれたので、読んでいました。そしてその回の「浮浪雲」のテーマは「いじめ」でした。


ある日、優等生だった少年が原因不明の自殺をします。そして自殺の原因がわからず思い悩む講師が主人公の雲に相談します。主人公の雲は言います。「いじめの本質をご存じですか?」と。


答えられない講師に言います。 「遺棄でんす。」


死体を遺棄すれば罪に問われる。生きている人間を遺棄するのはもっと大きな罪です、と。


そして講師は自分が見過ごしていたいじめを自分の記憶の中に発見します。


いじめが「遺棄」である、という指摘は見事です。いくら小突かれようと、悪口を言われようと、そこに人間関係が保たれていれば、やられている方も受け止めようがあります。しかし人格を無視した、人間関係を放棄した態度や行為は自分自身を否定する以外、受け止めようがありません。


いじめを発見できなかった講師、まったく悪気なくいじめ*1を展開していた生徒たち。それが見事に日常的に見られる風景として描かれています。少年の自殺がなかったなら、誰もいじめだと気づけないほどに。


そう、言い切ってしまうなら、誰も悪くないのです。

興味のある方はぜひご一読を。


浮浪雲 82 (ビッグコミックス)

浮浪雲 82 (ビッグコミックス)

※ ↑この巻に件の話が載っているわけではありません...まだ単行本に収録されていません。今発売されているビッグコミックオリジナルに載っています。

*1:自殺した本人にとってのいじめ。やっている方はいじめだと思ってもいない。