子を育てることの重さ

約3カ月にわたって食事をほとんど与えず、中学3年生の長男(15)を衰弱死させようとしたとして、大阪府警は25日、実父の大阪府岸和田市、トラック運転手烏野康信(40)、内縁の妻のパート従業員川口奈津代(38)の両容疑者を殺人未遂容疑で逮捕した。長男は昨年11月に保護されたが、現在も昏睡(こんすい)状態が続いている。府警は両容疑者の虐待がなぜここまでエスカレートしたのか詳しい動機を調べる。


子供を育てるだけの能力がない人が、「結婚したんだから子供を作るのが普通」といった軽い感覚で子供を作ってしまうケースが最近は妙に多いんじゃないか。この事件もその一つだと思う。


この事件では子供を餓死寸前に追い込んでいるという面がセンセーショナルだからニュースになっているが、この親はまだ働いているだけマシなんじゃないかと思う。もちろん虐待の末に餓死寸前まで追い込むなんて鬼畜の所業でしかないけれど、もっとひどい親はいる。


娘の稼ぎをそっくり取り上げて、娘の名義でサラ金から限界まで借金して、さらに娘に「売春でもしてこい」とのたまう母親を見たことがある。親に売られたっていう女性に会ったこともあるし(本当かどうかは知らん)、母子家庭で昼も夜も働いて母親を養っている女性に会ったこともあった。養ってもらっている母親は毎日パチンコにでかけては借金を膨らませていた。


実際、子供を育てる大変さは子供を持ってみないとわからない。子育てってのは自分の人生を部分的に子供に分け与える行為なんじゃないかと思う。それを間違えて、子供を自分の一部にしてしまう親がすごく目につく。


子育ての大変さってのは、尋常じゃない。子供は育つために様々なものを必要とする。経済的にも物質的にも精神的にもいろんなものを必要とする。くじける人もいる。子供に頼ってしまう人もいる。そういった人達を助けるのも尋常じゃない精神力と理解、時間、手間、お金が必要になる。


だから、子育てを支援する福祉制度はもっと充実してほしいと願う。現在の社会は複雑になりすぎて、決して一家庭で子育てを完遂できない状況になっている。なのにそういう状況に気づかず、福祉制度があることも知らず、たった一人でがんばろうとしている父親と母親が多い。父親と母親すら協力できていなかったりする。


もっともっと人々の間に交流が必要なんじゃないか。郵便、電話、ネットといった連絡手段が発達して、遠い距離まで情報を伝えることはできるようになった。しかし距離の近い人達と言葉では共有できないものを伝える手段が未発達すぎるんじゃないだろうか。昔は世間が狭かったおかげで、時間があった。みんな時間をかけていろんなものを共有していたはずだ。今はその"時間"を持てない。


メディアの中で最強のもの。それはやはり顔を突き合わしての会話、そして共同作業じゃなかろうか。



そのためにもっともっと人々に時間の余裕を持てるようになってほしい。システム屋として、そんな技術を開発したい。