デスマーチの中の人の心理

先日、「納品が間に合わずに、それを苦に自殺した人がいた」という話を書いたら、「なぜ自殺までしてしまうのかわかりません。」というお便りをいただいた。

いや、オレに言われても困る。と思ったが、デスマーチが実際どういうものなのか知らない人には理解できないのかもしれない。


確かに冷静に考えれば納品に間に合わない責任を真っ先に取らなきゃいけないのは管理職だし、そんなことでいちいち死んでいては管理職が絶滅してしまう。

どうしてデスマーチから逃げられないのか。


デスマーチ行進曲が流れだすと、まずプロジェクトメンバーの中に妙な仲間意識が芽生えだす。定時になったら帰る人達、休日はちゃんと休んでいる人達。そんな人達は外の人だ。

そして次に「みんながんばっているのに自分だけ逃げるわけにはいかない。」という罪悪感が育ち始める。自分の仕事が順調に進んで休めるにも関わらず、仕事場に顔を出すようになる。あるいは他のメンバーの仕事を手伝ったりする。「自分だけ楽をしていい状況ではない。」と思ってしまうのだ。


次に「ここまでがんばったんだから、最後までやり通そう」という気持ちが強くなる。これまでも休日を仕事に費やし、友人の誘いを断り、家族との時間を犠牲にしてきたことが一層この気持ちを強くさせる。

この頃になると家族や友人は気を使ってあまり話しかけてこなくなる。ただとてつもなく忙しいというだけで、詳しいことがわからないから声をかけようもなくなっている。本人はまったく余裕がなくなっているので、周りに気を使えなくなっていることが多い。ひどい場合はみんなが声をかけてこないのは見放されたからだと被害妄想に走ってしまう。いや実際見放されちゃってる場合も多いのだが。

そうなるとプライベートの人間関係に頼れなくなって、さらにデスマーチの歩調を早めてしまう。

もしアナタの友人や家族にデスマーチ中の人がいたら、こういう場合はぜひ声をかけてあげて欲しい。「お疲れさま」と一言だけでいい。食事とお風呂と布団を用意してあげてほしい。


状況がここまで進むと、生産効率ががっくり落ちて行進曲のテンポが早くなる。


プロジェクトの外の世界が疎遠になり、仕事だけが生活になる。唯一信じられるものがほかでもない、デスマーチ・プロジェクトそのものなのである。これでは逃げられるわけがない。

納品に間に合わなかったのは自分のせいだとあまりに自分を責めすぎて、心臓を止めてしまうのだ。自分のすべてと化したプロジェクトを自分がダメにしてしまった。責任感の強い人には耐えられないものなのかもしれない。


デスマーチが終わるたびに思う。チャランポランな性格でヨカッタと。